緩和ケア内科

●緩和ケアとは

 緩和ケアとは、生命を脅かす病に関連する問題に直面している患者とその家族の痛みやその他の身体的・心理社会的・スピリチュアルな問題を早期に見出し、的確に評価を行い対応することで、 苦痛を予防し和らげることを通して、患者とその家族のQOL(人生と生活の質)を向上させる取り組みである(WHO(世界保健機関)による定義)。

 このように緩和ケアは、困難な状況にあり苦悩の中にある人に適切な症状緩和を行うだけでなく、全人的に支えるためになされるケアを指します。患者さんの生命・生活の質を大切にして、最期まで少しでも自分らしく主体的に日々を送ることができるようになるための患者さんとご家族への具体的支援です。そのために、様々な専門職とボランティアがチームとしてケアを提供していきます。

●当科では

 当科では、緩和ケア外来、緩和ケア病棟、緩和ケアチームでの活動を行っています。
 緩和ケア外来を経て緩和ケア病棟に入院する患者さんの診療を主に行っていますが、緩和ケア外来での症状コントロールを含むサポートも行っています。また、それ以外にも病院内の各診療科で様々な疾患で治療中の患者さんの苦痛・悩みについても、緩和ケアチームとして、主治医と一緒に診療・ケア・意思決定のサポートを行っていきます。

■対象となる患者さん

 緩和ケア病棟入院による支援の対象となる方は、がんを主とした生命を脅かす疾患に対する積極的治療を行っていない患者さんで、苦痛の緩和が必要な場合や、全身状態が悪くまたは何らかの理由で入院による身の回りのお世話が必要な場合となります。
 なお、緩和ケア外来や、当院他病棟入院中のサポート(緩和ケアチーム)については、積極的治療を行っている方も対象となります。ご希望の場合は主治医や看護師にお伝えください。

■緩和ケアで受けられる医療・ケア

 緩和ケア病棟での医療処置としては苦痛緩和のための投薬だけでなく、必要な場合には症状緩和のための放射線照射(鎮痛、止血目的や、脊髄圧迫などの腫瘍緊急症の症状緩和のための放射線照射など)、胸水や腹水の排液などの各種処置、その他合併症に対しては各診療科の協力を得て、全身状態に応じた必要な対応を行っていきます。また、心理的サポート・リラクゼーション・家族ケアにも重点を置き、個別に応じた方法で苦痛を和らげ、自分らしく過ごしていけるように、緩和ケア医、精神科医、看護師、看護助手、薬剤師、ソーシャルワーカー、管理栄養士、リハビリテーションスタッフ、ボランティアがチームとなってQOLの向上を図る支援を行っていきます。

■地域との密な連携

 当院緩和ケア病棟はたとえ入院しても、希望や全身状態によっては在宅療養の再開が可能で、入退院を繰り返すこともできます。そのために、必要があれば在宅療養を支える訪問診療医、訪問看護師、ケアマネジャーなどとも密に連携し、当院ソーシャルワーカーを中心として入院の準備や退院生活のサポートを行います。

緩和ケア病棟   病棟パンフレット(click)

●理念

 緩和ケア病棟入院の対象となるあらゆる患者さんとご家族が、心と身体のつらさを和らげ、生活のしづらさなどの困難に対処していけるように、医療機関と多くの専門職が連携協働し、無理な延命もその逆もせず、その人らしい自己決定に基づく最良の医療を行います。この目的を果たすために病院の力を高める努力を惜しみません。

●緩和ケア病棟とは

 緩和ケア病棟は、悪性腫瘍などの生命を脅かす疾患による苦痛や関連する問題のために居宅(=自宅・介護施設など)での療養が困難な患者を入院の対象とし、専門職に非専門職(ボランティアなど)を加えた多職種チームによるアプローチを行い、患者とその家族(家族以外の介護者、患者が大切に思う人を含む)のQOLの向上を目的とした全人的ケアを提供する(以上、日本ホスピス緩和ケア協会)専門的緩和ケアがなされる入院施設となります。

 緩和ケア病棟の主治医は緩和ケア医となります。患者さんの痛みや苦しみ、悩みをできる限り和らげ、少しでも自分らしい日々を送ることができるよう、緩和ケア医、精神科医、看護師、看護助手、薬剤師、ソーシャルワーカー、管理栄養士、リハビリテーションスタッフ、ボランティアがチームとなって全人的にサポートし、QOLの向上を図る支援を行っていきます。また、患者さんだけでなく、ご家族や患者さんにとって大切な方々も、我々のケアの対象となります。

こちら(病棟紹介パンフレット)を参照ください

●緩和ケア病棟における基本方針

〇痛みやその他の苦痛となる症状を全人的に捉え和らげます
〇最期まで自分らしく生きていけるよう、心理的およびスピリチュアルなケアもチームで行い、支援します。
〇生命を尊重し、死を自然なことと認めます
〇無理な延命や意図的に死を早めるようなことはしません
〇患者さんの病の間、死別後に至るまで、ご家族が直面する困難に対処できるよう支援します

●緩和ケア病棟の入棟基準

〇がんを主とした、治癒を望めず生命を脅かす疾患に罹患し、それに関連する苦痛があり、ホスピス緩和ケアを必要とする患者さんであること
〇がんを主とした生命を脅かす疾患に対する積極的治療の継続が困難、もしくは希望されておられないこと(抗がん治療のような積極的治療は行いません)
〇患者さん、ご家族が緩和ケア病棟の方針や受けるケアを理解し、入院を希望していること
〇病名、病状について、原則的には患者さんが理解していること
(何らかの理由で説明がなされていないとき、患者さんの明確な求めがあった際には、適切に病名・病状の説明をさせていただく場合があります)

 当院緩和ケア病棟に入院後、希望に応じて退院することは可能で、必要時には再入院をすることができます(入退院を繰り返すことができます)。

※下記、日本ホスピス緩和ケア協会の基準を基にしています。
1)悪性腫瘍等の生命を脅かす様々な疾患に罹患し、ホスピス緩和ケアを必要とする患者およびその家族等の介護者を対象とする。
2)患者と家族、またはその何れかがホスピス緩和ケアを望んでいることを原則とする。
3)ホスピス緩和ケアの提供時に患者が病名・病状について理解していることが望ましい。もし、理解していない場合、患者の求めに応じて適切に病名・病状の説明をする。
4)家族がいないこと、収入が乏しいこと、特定の宗教を信仰していることなど、社会的、経済的、宗教的な理由で差別はしない。

●緩和ケア病棟の退院基準

〇ご本人・ご家族が退院を希望している
〇がんを主とした生命を脅かす疾患に対する積極的な治療を希望している
〇他院での代替療法を受けることが目的で入院をしている
〇苦痛が緩和され、状態が長期安定している
〇他の患者さんに迷惑をかけるなど共同生活の維持が困難である

なお、当院緩和ケア病棟では必要に応じて療養場所の検討を実施しています。退院が妥当と判断された場合には、その後の療養場所についてチームスタッフのサポートを受けながら検討していくことができます。また、退院したのちも緩和ケア病棟入院が必要な状況になった場合には再入院することができます。

●緩和ケア病棟で受けられる治療・ケア

 がんを主とした、治癒が難しく生命を脅かす疾患に関連する苦痛、苦悩を、適切なケアと治療でできる限り和らげるための専門的緩和ケアを受けることができます。

■医療的処置

 苦痛緩和のための投薬だけでなく、必要な場合には症状緩和のための放射線照射(鎮痛、止血目的や、脊髄圧迫などの腫瘍緊急症の症状緩和のための放射線照射など)、胸水や腹水の排液などの各種処置、その他合併症に対しては各診療科の協力を得て、全身状態に応じた必要な対応を行っていきます。治療内容によっては院内の治療病棟に一時的に移動していただく必要があることもあります。
 赤血球輸血は、ご本人の苦痛緩和のために行うことがありますが、延命のための輸血は行いません。経口摂取が困難となった場合の輸液はその時の全身状態、お身体への負担、合併症、希望などを考慮のうえ、適宜判断していきます。
 当院では行えない緩和的処置(γナイフ、経皮的椎体形成術など)が必要となった場合には、該当医療機関との連携を図り対応を検討していきます。
 これら投薬や輸液、その他の治療は、医療チーム内で適応を十分に検討したうえで、患者さんあるいはご家族と相談しながら行っていきます。

■その他のケア

 心理的サポート・リラクゼーション・家族ケアにも重点を置き、個別に応じた方法で苦痛を和らげ、自分らしく過ごしていけるように、緩和ケア医、精神科医、看護師、看護助手、薬剤師、ソーシャルワーカー、管理栄養士、リハビリテーションスタッフ、ボランティアがチームとなって、患者と家族がもつ身体的・精神的・社会的・スピリチュアルに関する多面的な求めに誠実に対応して全人的にサポートし、QOLの向上を図る支援を行っていきます。
 栄養科の積極的なサポートも受けることができ、平日昼1食はリクエスト食を選択することができたり、その他イベントに応じて食の楽しみを享受することができます。
 季節のイベント、記念日などに応じた行事も行っています。
 また、起き上がることができなくとも、特殊浴槽を使用した入浴ができます。
 なお、ボランティアを中心としたマッサージなど、チームの持つ技能・能力の範囲で患者さんに提供できるケアについては、個別に判断しながら積極的に行います。

■家族ケア

 患者さんだけでなく、ご家族や患者さんにとって大切な方々も我々のケアの対象です。患者さんとご家族の関係性の多様性に配慮しつつ、患者さんとのお別れの前から、ご家族や患者さんにとって大切な人へのケアを行います。ご遺族となられた後、強い悲しみのために日常生活に支障を来たす状態となられた場合には、適切な医療の専門家をご紹介させていただくこともできます。

■療養場所のサポート

 当院緩和ケア病棟はたとえ入院しても、希望や全身状態によっては在宅療養の再開が可能で、入退院を繰り返すこともできます。そのために、必要があれば在宅療養を支える訪問診療医、訪問看護師、ケアマネジャーなどとも密に連携し、当院ソーシャルワーカーを中心として入院の準備や退院生活のサポートを行います。

■代替療法について

 保険診療外の漢方薬や健康補助食品などを含めた補完代替療法を患者さんがご希望される場合、他の患者さんに迷惑となるようなもの、火を使う場合を除き、病棟スタッフで検討した上で許可できるものについては自己責任の下で継続することができます。 これらのご希望がある場合には、個別に医師、スタッフに必ず事前にご相談ください。なお、その際に使用する薬剤や食品などは、患者さん・ご家族に管理していただきます。

■病床数、費用について

全19床で、全室個室です。
無差額個室が10床、有差額個室9床となります。
医療費自体は健康保険ならびに高額療養費制度の適応になります。
医療費に加え、利用されるお部屋によっては下記の費用がかかります。

【個室料金】
有差額個室代は20,000円/日 (税抜)
一部屋のみ15,000円/日 (税抜)

■入院のタイミングについて

 初診外来受診後、入棟判定会議を経て、当科入院登録となられた方は、必要時に当院緩和ケア病棟への入院が可能となります。
 ご本人、ご家族、現行の主治医や訪問診療医などと連携しながら、お電話などで相談しながら利用のタイミングを決めていきます。
★緊急入院が必要な時は、可及的速やかにベッド調整を行い、対応していきます。

●緩和ケア病棟では受けられない治療について

〇緩和ケア病棟では抗がん治療、集中治療、患者さんのお身体の負担になるような検査・処置は行いません(がん治療中の入院もできません)。
〇病状が悪化したとき、延命治療(人工呼吸、気管挿管、気管切開、心臓マッサージなどの心肺蘇生措置や、昇圧剤の使用を含む集中治療、血液透析など)は行いません。心拍監視モニターも使用しません(がんの自然経過については見守る立場をとらせていただきます)。
〇症状緩和のための輸血は適宜行うことがありますが、延命のための輸血は行いません。
〇緩和ケア病棟に入院しながら、抗がん剤やホルモン剤、注射や点滴加療を要するような代替療法の治療を受けることはできません。

●面会について

 従来、患者さんが希望されるご家族、ご友人、ペットなどの面会が可能でしたが、社会的に重大な感染症の流行に応じて、適宜、面会の制限をさせていただいております。
面会時間:11時~20時 時間制限なし
面会対象者:原則、親族のみ中学生以上。
      広い個室の場合は3名、狭い個室の場合は2名まで
         (面会途中で病院の出入りは自由だが、面会者の入れ替わりは不可)
※親族以外の方との面会を希望される場合には、看護師へご相談ください。
 面会制限状況につきましては、当院相談窓口(緩和ケア相談専用ダイヤル:03-5794-7886までご照会ください(平日のみ))。

受診のご案内

●当院緩和ケア病棟へ入院を希望される方

まず当科初診外来を受診ください(完全予約制)。
すぐの入院希望、少し様子をみてからの入院希望、将来的な入院に備えての受診希望のいずれでも構いません。
受診希望の方は、通院している病院の主治医・看護師・ソーシャルワーカーなどにお伝えください。

●外来申し込み方法

◎当院通院中の患者さん → 当院の主治医もしくは看護師、ソーシャルワーカーに受診希望をお伝えいただければ、予約は手配されます。


◎他院通院中の患者さん → 患者さん、ご家族からのお申し込みの場合

①緩和ケア相談専用ダイヤル:03-5794-7886 (平日のみ)
 緩和ケア科の初診外来予約希望とお伝えください。なお、この時に患者さんの病状等基本的な情報をお伺いします。
②外来受診時に、診療情報提供書、検査データ(採血、画像など)が必ず必要となりますので、主治医に依頼し、外来当日ご持参ください。

◎他院通院中の患者さん → 医療機関からのお申し込みの場合

①緩和ケア相談専用ダイヤル:03-5794-7886 (平日のみ)
 FAX:03-3712-1199 (医療社会相談室直通)
 緩和ケア科の初診外来予約希望とお伝えください。
②外来受診時に、患者さん、ご家族が診療情報提供書、検査データ(採血、画像など)を持参できるようご準備お願い致します。

●外来受診時に必須なもの

①主治医からの診療情報提供書
②血液データ
③CTやMRI、X線写真などの画像データ(CD-ROM)
緩和ケア外来問診票(PDF) ※緩和ケア外来問診票は、印刷・ご記入の上で面談当日にご持参ください。印刷ができない方は、当日早めにお越しいただき、受診時間までにご記載ください(記入所要時間30分程度)。
⑤保険証
⑥お薬手帳

★当院通院中の患者さんは、上記④~⑥のみご持参ください。

●受診いただく方

 当科では、患者さん、ご家族に直接お会いし、生の声をお聞きし、人となりを少しでも理解させていただいたうえで、今後のケアに活かせるように対面外来を大切にし、初診外来を継続しております。今後の療養の希望や不安、ご自身の価値観、知っておいてほしいことなど、初診外来にてお伝えくださればと思います。
 よって、ご病状やご希望を把握し、お互いの理解を深めるために、患者さんの来院が困難な場合でない限り、患者さんとご家族の来院をお勧めしております。

●外来受診費用

 患者さんが受診できない場合は、保険診療上自費扱いとなり、初診家族面談料として5,000円(税別)がかかることをご了承ください。

●入院登録について

 当院緩和ケア外来において、患者さん、ご家族の希望、意思を確認し、当科の説明にご了解を頂いたうえで、当科での入棟判定会議を経て、適応があれば入院(待機)登録となり、必要時に入院が可能となります。結果は当院よりお電話にてご連絡致します。

●緩和ケアについてお知りになりたい方

お電話にてお問い合わせください。
東京共済病院緩和ケア相談専用ダイヤル:03-5794-7886 (平日のみ)
緩和ケアに関する電話相談であることをお伝えください。

●外来スケジュール

午後
(初診・再診)
松田 松田 松原 松田 松原 休診

●初診外来当日の流れ

①ご来院

 予約時間の30分前に、当院南館1階の総合受付1番までお越し下さい。
 患者さんが来院困難な場合にはご家族だけでの面談も可能です。

当日持参していただくもの
  • 主治医からの診療情報提供書
  • 血液データ
  • 画像データ(X線写真・CT・MRI)
  • 緩和ケア外来問診票(PDF)
    ※緩和ケア外来問診票は、印刷・ご記入の上で面談当日にご持参ください。印刷ができない方は、当日早めにお越しいただき、受診時間までにご記載ください(記入所要時間30分程度)。
  • 保険証
  • お薬手帳
②面談

 緩和ケア内科外来:毎週月~金曜日(祝日を除く)午後2時から
 お一人あたり30分の面談時間を予定しています。

③会計

 当日は外来受診料がかかります。
 (ご家族のみが来院された場合は、自費診療扱いとなります。)

●入院までの流れ

①初診外来予約(完全予約制)

②初診外来受診(ご本人、ご家族)

③緩和ケア病棟入棟判定会議

④結果のお知らせ(お電話にて)

⑤入院登録となられた方は、今後必要時に当院緩和ケア病棟への入院が可能となります
 (お電話で相談しながら利用のタイミングを決めていきます)
 ★緊急入院が必要な時は、可及的速やかにベッド調整を行い、対応していきます

●研究について

 緩和ケアはまだ発展途上の医療分野です。今後の緩和ケアの進歩のためには教育・研究が欠かせません。このため、緩和ケア病棟で行ったケアの内容を検討し、それらの結果を研究論文などにまとめて発表することがあります。また、提供されたケアの内容を今後の緩和ケアを向上させる目的でアンケートなどの形で患者さん、ご家族にご評価いただくことを任意でお願いすることもあります。当緩和ケア病棟では診療情報をこのような研究に使用する場合、それが誰のものなのか全く分からないようにしたうえでデータを使用しており、患者さん、ご家族にご迷惑をおかけすることがないよう行っております。
 なお、臨床研究のうち、通常診療で得られた情報のみを用いる研究については、国が定める「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」に基づき、対象となる患者さんから直接同意を受けない場合があります。この場合は、予め研究内容の詳細を公開し、患者さんが拒否できる機会を設けています(こうした手法を「オプトアウト」と呼び、一般的に広く採用されています)。研究のためにご自身の診療情報が使用されることを望まれない方は、各研究の問い合わせ先までご連絡ください。それ以外の個別の研究に際しては必要に応じて研究の内容をご説明し、ご同意を得るようにさせていただいております。
 このことについてご不明な点がございましたらいつでも緩和ケア病棟医師またはスタッフにご質問ください。

連絡先