脳神経外科の特色

当科には3つの特徴があります。

  1. 特発性正常圧水頭症の治療例数が本邦トップクラス。
  2. 地域医療に貢献、とりわけ脳卒中には超急性期の適切な治療法の選択に始まり、その後のリハビリ、更に退院に向けた環境調整まで一貫したチーム医療を実施しています。
  3. その他、聴神経腫瘍などの脳腫瘍や顔面痙攣などの機能性疾患にも長年の経験に基づき、患者毎に最適な治療法を提供しています。

特発性正常圧水頭症(iNPH)

桑名顧問と鮫島医師を中心に水頭症センターを2016年1月に設立し、LPシャント(腰椎くも膜下腔―腹腔シャント)を主に実施しています。iNPHは高齢者に多く、脳を穿刺する必要のないLPシャントはこれら高齢患者により優しい手術法と考えています。


増加する脳梗塞に対して

増加する脳梗塞に対しては、積極的に強力な血栓溶解剤であるt-PA投与し、これまでの50例ほどで良好な結果を得ています。また、クモ膜下出血に対してはその原因である動脈瘤に対し、開頭クリッピング(主として鮫島医師)にすべきか血管内治療(主として渡邊医師)にすべきかを症例毎に適切に判断し、両治療法ともにこれまで殆ど合併症なく対処しています。


【開頭クリッピングの例】
コイリング(血管内治療)が困難な形状または部位の動脈瘤に対して、開頭クリッピング手術を数多く実施しています。術中SEP(体性感覚誘発電位)モニター、術中ICG蛍光血管撮影、超音波dopplerによる血流測定等を用いて、安全な手術に努めています。


<症例> 右中大脳動脈 8mm大の脳動脈瘤
上段:脳血管撮影(3D)(右;術前 左;クリッピング術後)
下段:術中写真(右;脳動脈瘤クリップ前、中;クリップ後、左;術中ICG蛍光血管撮影)

脳血管撮影


【各種血管内治療例】
<内頚動脈狭窄に対するステント留置>
内頚動脈狭窄に対するステント留置 矢印1 内頚動脈狭窄に対するステント留置


<内頚動脈瘤に対するコイル塞栓術>
内頚動脈瘤に対するコイル塞栓術 矢印2 内頚動脈瘤に対するコイル塞栓術


<巨大な脳室内髄膜腫に対する切除前塞栓術>
ピンポン玉より大きな腫瘍陰影が消失し、腫瘍への血流が十分減少。これにより開頭切除時の出血を大幅に減少することが可能となりました。

脳血管撮影


聴神経腫瘍などの脳腫瘍や顔面痙攣などの機能性疾患に対して

脳腫瘍、とりわけ聴神経腫瘍は主に関前部長により治療されていますが、長年の経験から機能温存に留意し、ガンマナイフも取り入れた柔軟な治療法を選択しています。特に最近は小型腫瘍に対する聴力温存と、これをさらに一歩すすめた前庭機能温存に成功しています。以下、小型腫瘍の聴力と前庭機能温存例を提示します。
その他、顔面痙攣に対しては微小血管減圧術に限らず、ボトックス治療も実施しています。


1)小型腫瘍に対する顔面・聴力温存に加え、上前庭神経機能の温存に成功(2例)
図1は中年男性の小型腫瘍例(右側)で、顔面神経と聴力のほか上前庭神経機能も温存し、術後の平衡障害発生を防ぐことができました。他に3例にも同様な手術が実施されました。
<解説>
最近聴神経腫瘍の多くが下前庭神経起源であることが分かってきており、小型腫瘍については理論上、上前庭神経の温存が考えられていた。聴神経腫瘍では既に上前庭神経機能の廃絶しているものが多いが、小型腫瘍(内耳孔から脳側へ突出した部分の腫瘍径が1cm以下のもの)では、聴力のほか上前庭神経機能が良好に残っている症例が見られるようになった。上記症例はその1例で選択的な腫瘍切除術を実施したものです。(2007年聴神経腫瘍研究会、ならびに聴神経腫瘍国際会議[バルセロナ]にて発表)


図1.左は術前、右は術後。左図矢印の腫瘍は術後消失。


図2.術後の温度眼振反応で、左右差はみられず。 この検査は外耳道に冷刺激(または温刺激)を加え、誘発されるメマイ反応を調べるもので、外側半規管(上前庭神経)の働きを示します。上から2段目(手術側)と4段目の速度波形がほぼ鏡面像になっています。


2)大型腫瘍で術後聴力が改善
図3は中年女性の大型腫瘍(31mm大)で、当初からガンマナイフ治療を予定し、これを安全に実施するため、腫瘍の部分切除を希望されて来院。腫瘍切除を実施し19mmほどに縮小(容積にして75%切除)。その際、内耳道後壁も削除したが、その結果聴力は殆ど聞こえない96.3dBから43.8dB(0dBが正常平均)へと著明に改善(図4)。
<解説>
聴神経腫瘍手術では、聴力改善することはまれで、改善してもその多くが小型腫瘍例でした。大型ではこれまでに世界で数例しかなく極めてまれなことです。この例は初めから全摘は目指さず、ガンマナイフの安全照射のための腫瘍容積縮小を目的としたわけですが、術後蝸牛神経(聞こえに関する神経)の減圧効果が特殊なMRI画像で観察され、このことが、聴力回復につながったものと考えています。(2008年聴神経腫瘍研究会ならびに脳神経外科学会総会ミニシンポジウムにおいて発表)


図3.左が術前、右が術後.31mm大の腫瘍を部分切除(19mm大)し、内耳道後壁を削除。


図4.術前後の純音聴力図.術前96.3dBから43.8dBに改善。


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