正常圧水頭症センター(NPHセンター)
(本文:鮫島直之)
東京共済病院 正常圧水頭症センターは、脳神経外科疾患の中で、特に特発性正常圧水頭症(iNPH)を専門的に扱う科として2016年1月に設立されました。
当科の特徴はLPシャント(腰椎くも膜下腔―腹腔シャント)手術です。iNPHの治療にはシャント手術を行います。シャント手術には、LPシャント、VPシャント(脳室―腹腔シャント)、VAシャント(脳室―心房シャント)などの手術法がありますが、iNPHは高齢者に多く、脳に直接チューブを通さないLPシャント手術は低侵襲かつ高齢者に優しい治療法と考えられています。当科ではLPシャントを第1選択としており、その手術件数は国内トップランクです。多くのiNPH患者さんにLPシャントを有効かつ安全に行うことを第1に毎日の診療にあたっています。
また、当科は国内の多施設共同研究(SINPHONI-Ⅱ)への参加、全国の若い先生方へのLPシャント手術見学会の開催、国内、海外における学会活動へ積極的に参加するなど、日本のiNPH治療をリードしています。
図1:東京共済病院 NPHセンター のシャント手術件数
iNPHとは
図2:頭部MRI DESH所見
高齢になって次第に歩くのが遅くなり、歩幅が小刻みになり、すり足のような歩き方になる場合があります。転倒を繰り返すことも多いです。このような歩行障害に、物忘れや自発性の低下(認知障害)、あるいは頻尿、尿漏れ(尿失禁)などの症状が加わってくることが特発性正常圧水頭症の特徴です。画像診断では、頭部MRI、CTの冠状断で特徴的な脳室拡大の所見(DESH)を認めます。このような患者さんに対し、当科では水頭症外来を以下のとおり実施しています。
月曜日 午前 | 桑名(水頭症外来:完全予約制) 鮫島(当日初診可) |
火曜日 午前 | 桑名(水頭症外来:完全予約制) 渡邉(当日初診可) |
木曜日 午前 | 鮫島 |
金曜日 午前 | 渡邊 |
検査を受けられる方へ
診察の結果、症状、経過、画像所見から特発性正常圧水頭症を疑う場合、当科では3日間の入院検査を行いタップテスト(腰椎穿刺;脳脊髄液30ml排液テスト)を実施します。
タップ前後で歩行障害、認知症、排尿障害が改善するか種々の評価法を用いて診断します。
手術を受けられる方へ
図3:LPシャント術後 3D-CT
検査の結果、シャント手術の適応と診断した場合、手術加療を行います。
当科の第1選択(first line treatment)はLPシャント(腰椎くも膜下腔―腹腔短絡術)です。頸椎~腰椎に脊柱管狭窄がないか脊椎MRIを実施しLPシャントが安全に実施できるか判断します。検査の結果でVPシャントを選択する場合があります。
術後1週間はシャントの効果が十分に得られるよう、至適シャント圧の決定とリハビリを行います。術後10日目に抜糸を行います。
入院は約2週間です。
安全かつ有効なシャント手術を行い、良好な治療成績をおさめています。