膠原病とは

 関節リウマチを代表とする膠原病は、異常な「免疫」による病気です。本来、私たちは、正常な免疫の機能によって、細菌やウイルスから体を守られています。ところが、いつのまにか自分の体を攻撃してしまう異常な免疫が生じ、全身の様々な場所に障害を引き起こしてしまいます。

 膠原病の代表的な初期症状は、手指を中心とした複数の関節にはれぼったさや痛みを感じることです。ときに顔や手足の皮膚に赤みや斑点、もしくは熱を伴うこともあります。これらの症状が数週間以上続くときに膠原病を疑います(1, 2週間以内に改善傾向になれば、ウイルス感染症の可能性が高いです)。

 膠原病の特徴は、自覚症状が関節や皮膚の症状だけでも、実際は無自覚に全身の様々な臓器に障害を生じうることです。特に、命にかかわる間質性肺炎や、透析を要するようになってしまう腎炎が無症状で進行していることも珍しくありません。

 そのため、初診時から専門家の診察、総合病院ならではのくわしい血液検査や画像検査を当日に行います。もし、入院が望ましいような病状であれば、素早く入院による治療も行っています。

 このような素早い対応ができるのは、全身の診療科がそろう総合病院かつ常勤の膠原病の専門家が毎日診療している当院ならではの特徴かと存じます。


診療疾患

表のように、あらゆる膠原病を診療しています。
特に、全身性エリテマトーデス(SLE)、血管炎、関節リウマチに力を入れています。
なお、線維筋痛症は、非免疫疾患で、ペインクリニック科がないため、当院では診療しておりません。

抗核抗体関連疾患 SLE(全身性エリテマトーデス)、炎症性筋疾患(皮膚筋炎、無筋症性皮膚筋炎、多発性筋炎、免疫介在性壊死性筋症)、、全身性強皮症、混合性結合組織病、シェーグレン症候群
血管炎 高安動脈炎、巨細胞性動脈炎(側頭動脈炎)、、ANCA関連血管炎(顕微鏡的多発血管炎、多発血管炎性肉芽種症、好酸球性多発血管炎性肉芽種症)、結節性多発動脈炎、IgA 血管炎、クリオグロブリン血症性血管炎、蕁麻疹様血管炎、Cogan 症候群、抗 GBM 病
関節リウマチと類縁疾患 関節リウマチ、リウマチ性多発筋痛症、RS3PE 症候群、若年性特発性関節炎、悪性関節リウマチ、回帰性リウマチ
脊椎関節炎 乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、反応性関節炎、クローン病や潰瘍性大腸炎に伴う関節炎、SAPHO 症候群(胸鎖・胸肋関節炎を含む)、、掌蹠膿疱症性骨関節炎
良性リンパ増殖性疾患 IgG4 関連疾患、キャッスルマン病、TAFRO 症候群
良性好酸球性疾患 特発性好酸球性増多症、血管性浮腫、好酸球性筋膜炎、好酸球性多発血管炎性肉芽種症
その他の免疫疾患 ベーチェット病、成人スチル病、再発性多発軟骨炎、抗リン脂質抗体症候群、VEXAS症候群、血栓性血小板減少性紫斑病、慢性再発性多発性骨髄炎、サルコイドーシス、irAE(免疫関連有害事象)
原発性免疫不全症 様々。特殊検査を要する際は専門施設にご紹介します。
自己炎症性疾患 家族性地中海熱、クリオピリン関連周期熱症候群、TNF 受容体関連周期性症候群、PFAPA 症候群など

膠原病は、比較的若年の女性において発症することも多く、治療と並行して、妊娠・出産を経験される患者さんも少なくありません。当科では、膠原病のような病気をかかえながら妊娠・出産を安心して行えるように、合併症妊娠を専門に診療している国立成育医療研究センター(世田谷区)と綿密に連携し、毎年吉報をいただいております。


診療体制

スタッフは、東京医科歯科大学(2024年10月より東京科学大学に改称)の膠原病・リウマチ先端医療センターより赴任しています。


外来・入院患者さんの増加に対応して、常勤医を3名に増員し、非常勤医は2名で、平日毎日午前中の専門外来(受付は11時半まで)と入院患者さんの診療を行っています。


患者さんへ

膠原病は、難病だからといって諦めないでください。

痛くてつらい関節リウマチや脊椎関節炎などの節々の病気から、副作用の多いステロイドを中々減らせなかった全身性エリテマトーデスや血管炎などの全身の病気まで、治療法が年々進化しています。

ひとりひとりの患者さんに合った診療を、一緒に相談しながら、真摯に取り組んでいきたいと考えています。


医療機関の先生方へ

 膠原病疑い、抗核抗体陽性などの検査異常の患者さんをいつもご紹介いただき、誠にありがとうございます。
 引き続き、当院に紹介してよかったと先生方から、また、紹介されてよかったと患者さんに思っていただけるよう、努めて参ります。


 外来は、平日毎日午前中に診療しております。紹介状をお渡しいただき、患者さんに電話でご予約(電話03-3712-3151)して頂くと、患者さんをお待たせする時間が少なくてすみますが、直近の予約枠がすぐに埋まってしまい、ご希望通りの日程に予約枠が空いていないこともございます。早期受診が望ましい場合は、予約がなくても、午前11時半までにご受診いただくようにお伝えいただければ、原則専門家が拝見します(予約優先のため、待ち時間が長くなりうることはご了承ください)。


 また、入院された患者さんの診断で膠原病を疑うものの、膠原病の常勤医が不在で先生方がお困りの場合、医療連携室(電話03-3792-6699、FAX 03-3712-1199)に転院のご相談をいただければ幸いです。


 診療疾患の表のように、全ての膠原病を診療しておりますが、特に、全身性エリテマトーデス(SLE、LUNAコホート)、ANCA関連血管炎(AAV、J-CANVASコホート)、関節炎については、国内外との多施設共同臨床研究施設として、患者さんへの還元を目指した学術活動も行っており、ご紹介いただけると幸甚です1-10


  1. Matsuo Y et al. N Engl J Med. 2021, 384(21):e81 (AAV)
  2. Matsuo Y et al. Rheumatology (Oxford). 2021, 1;60(9): e339(関節リウマチ)
  3. Matsuo Y et al. Arthritis Rheumatol. 2022, 74(1):175 (SLE)
  4. Shimojima Y et al. Arthritis Res Ther. 2022. 24(1):204 (AAV)
  5. Waki D, Yagyu Y et al. PLoS One. 2022, 17(7):e0271921(関節リウマチ)
  6. Yanai R et al. Rheumatol Ther. 2023, 10(2):421 (SLE)
  7. Yoshida Y et al. J Rheumatol. 2023, 50(9):1152 (AAV)
  8. Omura S et al. Rheumatology (Oxford). 2023, 62(12):3924 (AAV)
  9. Sofue H et al. Mod Rheumatol. 2024, 34(4):767 (AAV)
  10. 松尾祐介ら、フレームワークで考える内科診断、メディカル・サイエンス・インターナショナル、2021年
  11. 松尾祐介ら、medicina ミミッカー症例からいかに学ぶか、医学書院、2023年