循環器科の特色

循環器科画像1  循環器科では、血液の循環に関係する臓器(心臓、大動脈、末梢動脈、静脈、肺動脈)におきる病気(循環器疾患)全般を扱っています。
 狭心症、心筋梗塞、弁膜症、心筋症、心不全、不整脈などの各種心臓病の他、末梢動脈疾患(下肢の動脈硬化症など)や静脈血栓症の診断・治療、大動脈疾患(解離性大動脈瘤など)の診断・内科的治療も行っています。

問診と言って・・
 「急いで歩くと胸が苦しくなる」、「動悸がする」、「心電図がおかしいと言われた」「歩くと足が痛くなる」「一日中消えないむくみがあり、息苦しい」などは循環器の病気を疑わせます。どうぞ気軽に受診してご相談ください。


循環器科受診のきっかけとなる症状

胸痛、背部痛

 強い胸痛、背部痛が続くならすぐに医療機関受診を勧めます。
 冠動脈造影検査(心臓カテーテル検査、冠動脈MD-CT)で正常であっても、狭心痛を起こす方がいますので、ご相談ください。


【胸 痛】
  • 胸痛の起きた時間
    • 安静時なのか、動いていたのか
  • 持続時間、程度
    • 一時的なのか、数分続くのか
  • 痛みの性状
    • キリキリと刺すように痛い
    • ズキンズキンと痛い
    • 重く圧迫されるような痛み
    • 締め付けられるような痛み
などを教えてください。

 胸痛は心臓の他に、肺、肋骨、神経、大動脈、消化管(食道、胃、十二指腸)、皮膚(帯状疱疹)などで生じます。同じ締め付けられるような痛みでも、階段や坂を登っていたときに起きたのなら、狭心症を疑いますが、早朝安静時に起きたのなら、冠れん縮性狭心症を疑います。冷や汗が出るような胸痛が続くときは、心筋梗塞を疑って、迷わず救急車を呼んで下さい。下の写真は冠れん縮性狭心症を示しています。左の写真は通常の心臓カテーテル検査で非発作時の正常であった左前下行枝(LAD)を示しています。右の写真では、同じ方に、アセチルコリンを冠動脈内に注入したところ、LADにれん縮を起こして、血液が流れなくなったため、LADが途中から映っていません。この冠れん縮性狭心症は喫煙者に多いですが、たばこを吸わない方でも起こり、最近は若い人にも見られます。診断がつけば、内服で改善します。

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 他には、チクチクやズキンズキンと痛むときは、神経痛や、筋肉痛が多く、キリキリと痛むときは胃・十二指腸潰瘍や逆流性食道炎が考えられます。


動悸

 動悸の原因は高血圧、不整脈(脈が速い、遅い、乱れている)、心因的な不安感など様々ですが、お話を伺うことである程度の状況がわかります。


【動 悸】
  • 動悸の起きた時間
  • 飲酒翌朝に悪化するか?食事との関連があるのか
  • 持続時間、程度
  • 血圧計があれば、動悸しているときの血圧、脈拍を記録
  • 動悸の性状
    • 脈が速いのか、遅いのか、乱れているのか
    • 規則的な脈の途中で、所々乱れているのか
    • 脈がてんでバラバラに乱れているのか
    • 急に始まって、急に止まるのか
などを教えてください。

循環器科画像3  動悸に気づいたら、自分で脈をみてください。動悸といっても、血圧が高くて、心臓の拍動が胸を強く打って、ドッキドッキと胸をたたかれるのを動悸と感じる事があります。また、不整脈でも動悸を感じます。規則正しい脈がときどき跳ぶ(結滞)のは、期外収縮が考えられます。発作回数が多いなら、24時間心電図(ホルター心電図)で評価します。規則正しい脈が触れなかったり、以前とくらべて疲れやすいような場合は、心房細動を疑います。心房細動は大量飲酒翌朝に起こる事が多いです。急に速くなり、急に元に戻る場合、発作性頻脈を疑います。その他に、徐脈(脈が遅い)、頻脈(脈が速い)などでも動悸と感じます。あまり脈が遅いと、心不全になったり、危険となるので、ペースメーカを植え込む場合もあります。


浮腫

 手足や、からだ、顔がむくむときは、心不全や弁膜症、感染症や血栓症、腎機能が低下しているなど、様々な原因が考えられます。緊急の治療が必要となったり、食生活を変えるだけで治るなど、さまざまなので、ご相談ください。


【浮 腫】
  • 夕方だけなのか、朝からむくんでいるのか。
  • いつ頃から、むくみ始めたのか。体重が増えたのはいつからか
  • 塩分、水分摂取が多いのか。食事内容、間食内容
  • 飲んでいる薬が増えたり、変わったりしたのか
などを教えてください。

 朝起きた時にむくみがなく、2,3時間するとむくみ始める場合は、病的なものではなくて、塩分摂取量や水分摂取が多いだけかもしれません。朝からむくみが強かったり、体重も急に増えた場合は心機能や腎機能の検査が必要になります。また、片足だけむくんだり、痛みを伴う場合は感染症や、血栓の可能性があるので、受診して下さい。


対象疾患

虚血性心疾患 狭心症、冠攣縮性狭心症、心筋梗塞、心不全
心筋疾患 大動脈弁・僧帽弁の閉鎖不全症、狭窄症
不整脈 心房細動他、徐脈性不整脈、頻脈性不整脈
高血圧症 本態性高血圧症、二次性高血圧症
動脈疾患 大動脈瘤、大動脈解離、閉塞性動脈硬化症、透析シャント狭窄症
静脈疾患 深部静脈血栓症、肺血栓塞栓症

主要な検査

一般的な血液検査、心電図、レントゲン、CTの他に

  • 24時間心電図(ホルター心電図)
  • 心臓超音波検査(心エコー)
  • 運動負荷心電図(トレッドミル運動負荷試験、マスター2段階運動負荷試験)
  • 脈波
  • 冠動脈MD-CT
  • MRI
  • 経皮的冠動脈造影検査(心臓カテーテル検査)

主要な手技

  • 経皮的冠動脈形成術(PCI、ステント留置術)
  • 経皮的動脈形成術(PTA、シャント狭窄、動脈狭窄に対して、バルーン拡張、ステント留置術)
  • ペースメーカー植込術
  • カテーテルアブレーション

冠動脈MD-CTについて

 東京共済病院では狭心症の検査として、平成22年7月からGE社製の64列CTを導入し冠動脈CTが撮影できるようになりました。
 狭心症とは心臓の表面を走っている冠動脈という血管が動脈硬化で狭くなり、心臓への血流が少なくなって起きる症状です。安静時の心電図や超音波検査では異常が現れない事が多いため、診断をつけるには、入院して冠動脈造影という精密検査を受ける必要がありました。
 最近になり、この冠動脈の形態をCT検査で映し出すこと技術が可能となってきました。腕の静脈に、通常の点滴治療で使う細い針を入れ、造影剤を50ml程度注射して、冠動脈の形態を映し出します。
 最大のメリットとしては外来で行え、短時間で終わるため、患者様の時間的制約や恐怖心が少ないことがあります。狭心症ではないかと言われているが、カテーテル検査を迷っている方にはおすすめの検査です。
循環器科画像4  検査自体は15分程度で終了します。来院されてから血圧、脈拍を測定し、必要なら脈拍数を安定させるお薬を飲んでいただいてから、検査を行います。来院されてからおおよそ2時間程度で帰宅が可能です。
 重い不整脈がある方や、造影剤アレルギーのある方、重い腎機能障害がある方は検査が受けられません。これらは問診にて判断します。
 冠動脈の石灰化が強い場合は十分な情報が得られないことがあります。
 ご興味のある方、自分も狭心症かも?と心配な方は、どうぞ気軽にご相談ください。


心房細動外来について

 心房細動は高齢者に多く見られる不整脈です。加齢とともに増加し、70歳代の5%、80歳代の10%程度の割合でみられます。自覚症状は動悸、息切れであることが多いですが、発作に気づかずに健康診断等でたまたま見つかることも少なくありません。心房(心臓の上半分の部屋)内で1分間に400~600回の不規則な電気信号が発生し、心房全体が小刻みに震えるもので、それ自体は命に関わる危険な不整脈ではありませんが、放置すると心不全や脳梗塞などの重い病気の原因となる可能性があります。
 心房細動の治療の基本は、抗不整脈薬を中心とするお薬の治療です。しかし最近、カテーテルを用いた手術(カテーテルアブレーション)等、薬以外の治療法が目覚ましく進歩しました。カテーテル治療を行うことによって、施設によって差はありますが、発作性心房細動であれば一回の治療で70-80%、2回までの追加治療で80-90%近い成功率で行えるようになりつつあります。また慢性心房細動であってもカテーテルアブレーションが有効な場合があります。


 当院では東京医科歯科大学と連携し、毎週水曜午後の心房細動外来では東京医科歯科大学循環器科のカテーテル治療担当医師が診療を担当しています。問診、検査などを行い、カテーテル治療が有効である可能性が高いかどうか判断します。また東京医科歯科大学を受診することなく、手術の詳しい方法の説明を受け、手術の予約をすることが可能です。
 まだ手術を受けるかどうか迷っておられる方は、受診・相談だけでも結構ですので、気軽にご相談なさってください。


心臓血管外科外来について

 心臓血管研究所付属病院の心臓血管外科と連携して、毎週金曜午後に外来診療を行っております。弁膜症や狭心症、大動脈瘤など、治療や手術の適応など、ご相談いただくことができます。


2019年 心臓カテーテル検査統計

冠動脈造影検査 261件
診断カテーテル検査 183件
アセチルコリン・エルゴノビン負荷試験 8件
PCI・ステント留置術 70件
心臓電気生理学検査 1件
ペースメーカー植込・交換 17件
下大静脈フィルター留置 1件
PTA 13件